2017/12/06

編集者も本を売りに行こう

お前誰よ?

このエントリは「編集とライティングにまつわるアレコレ Advent Calendar 2017」6日目の記事です。

こんにちは瀧澤です。モーリさんにお声をかけていただいて参加しました。

初めての方向けに説明しますと、とある人文系特殊版元から某IT系版元で12年弱編集に携わり、現在はこれまた別のIT系の版元で電子書籍関連の仕事などをしています。モーリさんは二つ目の会社の先輩でした。

最近の主な興味は分割型キーボードの自作です。自分でもErgodox_ezという分割型のキーボードを使っていて大変気に入っています。分割型キーボードの効能についてはこの辺に書いてあるのですが、僕も今のキーボードを使うようになってから肩こりが劇的に改善しました。

いまはこの分割型キーボードを自作するネットワーク上のコミュニティができていて、そこを覗きつつirisのPCBを注文して届くのを待っています。その間にLet's Splitにも興味が出てきて、着実に沼にはまりつつあるのを感じている日々です。

「フルスタック編集者の話」ではなく

さて、当初はフルスタック編集者について書こうと思っていたのですが、このアドベントカレンダーに登録されている方には真のフルスタック編集者(自分で出版社をやってらっしゃる)がいらっしゃるので、その辺の話は他の方にお任せして、僕は他の方の書かないようなことを書いてみようと思います。

僕は現在は編集者ではなく、主に電子書籍サイトの運営と(ファイルフォーマットの管理という意味での)コンテンツ制作、たまに実際に電子書籍を企画編集するコンテンツ制作を行なっています。2008年からやっているのでもう9年になるのですが、当初はできることがとても限られていたので、それ以外のこともいろいろやっています。その中にはユーザーコミュニティや各企業が主催するイベントに出向いて書籍の販売を行うなんていう業務も含まれています。

「あー、学会なんかで売るアレね」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、現在の勤務先はその辺ちょっと変わっていて、というか僕を今の会社に誘ってくれた元上司が常に手を抜かない人だったため、どんなイベントでも周りが引く位の書籍を持ち込んで販売を行っています。

一年のうちで一番大きな出展イベントになると、販売用に持ち込む書籍が2,000冊を超えたりします。コンピュータ関連書なので判型もそれなりに大きく(ほとんどがB5変形とA5で、半々くらい)、その他の機材やノベルティとして提供するグッズなども合わせると、2トンのトラックではちょっと積みきれないくらいの物量になります。

積載量4トンのトラックに積み込みを完了すると、だいたいこんな感じになります。

ちょうど今年のイベントの設営中の写真がありましたので貼っておくとこんな感じです。

昨年のものですが、ブースが完成するとこんな感じになります。

このクラスのイベントになると、やってくるお客さんの数も半端ではありません。別のイベントの話ですが、イベント後に決済アプリ(squareを使っています)のログを確認したら、一番混雑している時間帯で、1時間あたり60取引が記録されていました。レジ2台で回しているので、1つのレジあたり2分で1取引ということになります。

  1. お客さんが商品をレジに持ってくる

  2. バーコードをスキャンして代金を告げる

  3. 現金をいただいてお釣りを返す、またはカード決済をする

  4. 購入金額に応じてノベルティを提供するので、複数から選んでもらう

  5. 商品とグッズを袋詰めしてお渡し

を2分に1回です。一日中この状態が続くわけではありませんが、結構大変です。

イベント販売の現場から

ここまでお読みになって「どこが編集と関係してるんだ」とお思いになられるかもしれません。でもちゃんと関係しています。

上記でご説明したものは極端としても、ある程度の物量をさばいていると、普段見えないことが見えてきます。というのも、そこに来たお客さんがとる行動は、多くの場合、日々普通の書店さんで起きているであろう状況にずいぶんと近づいていると思われるからです。

書籍を売るためには陳列するのですが、どういう順番で何を並べると良いのかから既に戦いは始まっています。書籍同士の関係性になるべく破綻がないように並べるところから始まるのですが、複数日のイベントでは初日ほとんど売れなかったのに、置き場所を変えると途端に動き出したりします。

イベントによってはよりお客さんの注目を引くために、その場で手書きのPOPを書いたりもします。声がけなんかもします。何を書けば、どんな言葉をかければお客さんの目に止まるのか、振り向いてもらえるのか。目の前でリアルにお客さんの反応が見られるので、途中でPOPを作り直したり、本の置き場を変えたりして、お客さんの反応どう変わるかを確かめる。そこから学べることがたくさんあります。

また、中には書籍の内容についてご質問を受けたり、内容に関する感想をいただいたりします。個人的な話ですが、プログラマの友人が結構いるので、イベントによっては書籍を買いにきた彼らと雑談をしながら、なぜその本を選んだのかを聞いたりすると、思っても見なかった書籍同士の関連性がわかったりもします。

いわゆるPDCAサイクルというやつが、イベント中にぐるぐる回ってるのがわかります。電子書籍販売サイトを運営する上で、このイベント販売の経験から学べることがたくさんありました。また、オビやサイトの惹句を考えたりするときにも、イベントで見かけた光景を想像しながら言葉を選んだりします。

電子書籍の販売を始めた当初には、「イベント会場で電子書籍を手売りする」ということもやってみました。完全に冗談からはじまった話なのですが、実際に電子書籍を買いたいという方の生の声を聞けた(そしていろいろなご不満をいただいたりもした)ので、(良い意味で)その後の方針やら決定やらに大きく影響したと思っています。

誰でも、そしてどんな版元でもこういう環境が得られるかは別としても、お客さんが平台に積んだ本を手にとって、中をパラパラと眺めて購入する、または元に戻す。という行動を観察して、それを自分の本作りに活かすということなら、割と簡単に始められると思います。そして自分が関わった本が目の前で売れていく様を見るのは大変気持ちの良い光景です。

まとめ

  • お客さんに直接書籍を販売に行くといろいろ学べます

  • いろいろ試行錯誤をして、ハマった瞬間は楽しい

  • あまりに規模が大きくなると、それはそれでしんどい

  • 分割型キーボードで肩こりが激減するよ

明日はmktredwellさんのエントリです。お楽しみに!

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