2017/12/16

pyspa books(概念)についてのまとめ 2017年版

これはpyspaアドベントカレンダー2017、16日目の記事です。

こんにちは。turkyです。皆さんお元気ですか?僕は風邪を引いて、金曜にあった職場の忘年会をドタキャンしました。皆さんも気をつけてくださいね!

さて、「pyspa books」と僕が呼んでいる一連の書籍群があります。「pyspaは概念」という言葉がありますが、これに従うならpyspa booksも概念と言えるでしょう。実際にそのような名前のシリーズやら書籍があるわけではありません。

pyspaに集まった人たちの中から生まれて来た書籍、その何割かは僕が関わったものなのですが、それを心の中で「pyspa books(概念)」と呼んでいます。

はじまり

ことのおこりは@ymotongpooが2012年にpyfesで行ったプレゼンが参考になります。これの19枚目に出てくる「某外資系出版社のT氏」が私です。ガラ悪そうですね。

ということで@ymotongpooに翻訳してもらったのがこちら。確かこれがpyspaがきっかけで誕生した最初の書籍になると思います。もう5年前になるんですね。

https://www.oreilly.co.jp/books/images/picture978-4-87311-540-5.gif

Java開発者のための関数プログラミング』(2012/6)

続いて書き下ろしの電子書籍として執筆してもらい、PyCon JP当日にリリースしたのがこちら。正確にはsphinx-users.jpの皆さんなのですが、メンバーの過半数がpyspa参加者でもあるのでpyspa関連書籍に含めてしまっても良いでしょう。

https://www.oreilly.co.jp/books/images/picture978-4-87311-648-8.gif

Sphinxをはじめよう』(2013/9)

あまり知られておりませんが、@shiumachiが監訳している書籍もあります。これは内容の検証がとても大変で、お願いして監訳してもらったもの。

https://www.oreilly.co.jp/books/images/picture978-4-87311-662-4.gif

Apache sqoopクックブック』(2014/3)

この辺までは、僕自身もまだ試行錯誤しているような部分があり、書き下ろしも『Sphinxをはじめよう』1冊だけです。

pyspaらしさの表出

この辺から書籍のキャラクターにもpyspaらしさが出てきているように思います。まさにpyspaチャットでの雑談から生まれたのがこちらの書籍。

https://www.oreilly.co.jp/books/images/picture978-4-87311-683-9.gif

word2vecによる自然言語処理』(2014/5)

@nishoがword2vecのお話をしてて、「なにか食わせるデータがないかな?」という話になり、「書籍を書いていただけるならデータをご提供できます」ということで形になったという経緯があります。

@shibu_jpにご執筆いただいたMithril本です。この本は世界最速で書かれた(そしておそらく世界唯一の)最速JSフレームワークの書籍となりました。

https://www.oreilly.co.jp/books/images/picture978-4-87311-744-7.gif

Mithril』(2015/8)

この本を出したとき、@shibu_jpから「紙の本もあったらいいですよね」という言葉をいただき、これまで出した電子書籍をプリント・オン・デマンドにする試みを始めます。

電子から紙へ

そして今年になり、印刷された書籍として1年の執筆期間を経て登場したのがこちら。こちらについては別途エントリがありますので、そちらをご覧ください。おとうさんはえらい。

https://www.oreilly.co.jp/books/images/picture978-4-87311-804-8.gif

Real World HTTP』(2017/6)

そして2013年にリリースした『Sphinxをはじめよう』を改訂、同時にPODも制作して絶賛発売中です。今回は前回よりもsphinx-uses.jp度が高まっているので、このリストに挙げるのはまあギリギリ範囲内という感じだと思っています。

https://www.oreilly.co.jp/books/images/picture978-4-87311-819-2.gif

Sphinxをはじめよう 第2版』(2017/10)

さらに、技術書典2で@chezou@tokoroten@hagino3000が同人誌として発売した書籍が生まれ変わって登場したのがこちらです。

https://www.oreilly.co.jp/books/images/picture978-4-87311-821-5.gif

仕事ではじめる機械学習』(2017/10)

ちなみにこの書籍は2018年1月に紙の書籍として再リリースされます。2度(生まれなかった1回を含めると3度)転生した書籍という、技術書としてはかなり珍しい事例だと思います。

僕が関わった以外のpyspa books(概念)

以上が僕の関わったpyspa関連書籍、pyspa books(概念)なのですが、僕が関わっていないものもあります。@golden_luckyこと鹿野さんの手になる書籍です。以下ご紹介しましょう。

こちらはpyfesの会場で原書を手にお話ししていたのを覚えています。訳者の@ransuiにはゲラを見せてもらいながら意見を求められたりもした思い出が。「明日のすーぱーはかーを育てる本」というテーマは@ransuiとは10年以上前から話し合っていて、それがこういう形で実現しているのは嬉しくもあり、ちょっと悔しい気持ちもあり、その位いい本です!

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/516qSOSJhSL._SX380_BO1,204,203,200_.jpg

たのしいプログラミング Pythonではじめよう』(2014/2)

こちらは@ymotongpooが訳していたWebのドキュメントが英語圏で書籍化され、翻訳も再編集されて書籍になったもの。つい先日、担当編集であった@golden_luckyにお聞きしたら、元々は『すごいHakellたのしく学ぼう』の訳者さん経由でのお話しであったということですが、入れちゃってOKということなのリストに入れちゃいます。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51lkQxVnXXL._SX351_BO1,204,203,200_.jpg

すごいErlangゆかいに学ぼう!』(2014/7)

(追記)

公開直後に@golden_luckyからご指摘いただきました、@cocoatomoが翻訳するこちらもリストアップすべき1冊です(すみませんでした)。僕みたいな文系学部を出てる人間にとっては数学と聞くと「数学コワイ」と条件反射してしまいがちなのですが...いえ、もちろん購入済みですよ(積読中)。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ndMRNeT%2BL._SX350_BO1,204,203,200_.jpg

グッド・マス

こちらは『Real World HTTP』の執筆と並行して進んでいたascii.jpでの連載を再編集して書籍化したものです。執筆時期が同じという意味で勝手に双子の兄弟のような書籍だと思っています。本書は技術書典3で先行発売されたのですが、たまたま出展ブースが隣だったので、開場と同時に購入しました。

https://cdn.shopify.com/s/files/1/1634/7169/products/progo_530x.png

Goならわかるシステムプログラミング』(2017/10)

なぜpyspaで本をつくるのか

特に今年に入ってからのものは、製作中のレビューにもpyspaメンバーにお手伝いいただくことが増えました。皆さんジャンルの異なるスペシャリストなので、違う方向から球が飛んで来てとても勉強になります。

しかも普段から笑いながらマサカリを投げあうコミュニケーションをし合っている人達なので、馴れ合っている中でも容赦はありません(下記参照)。

ただし、投げてもらったマサカリをどうするかについては、チャットルーム外で著者さんと僕の間で相談して最終決定をしていました。この辺の線引きをきちんとしたのは良かったと思います。

僕は企画編集をメインの仕事としていないので、外へ出て著者さんを探し、書籍を作ることはあまりしていません。ですが、普段チャットルームや宴会で行われている小学生レベルの会話の合間にキラリと光る知性を見せられると「これ本にしたいなー」と思ってしまうんですよね。で、それを遠慮なく口にするというところから多くの話ははじまります。上記のリストの書き下ろしの書籍はほぼ100%このパターンです。

おわりに

ということでpyspa books(概念)の現在について簡単にまとめてみました。クレジットされていないけれど、中身をざっとみてもらったりした本は他にもあります。周辺という意味では『Python文法詳解』を含めてもいいのかと思いますが、あの書籍の成立にはまた別の物語があります。これについては気が向いたらいつか書くかもしれません(書かないかも)。

今回ご紹介したpyspa books(概念)ですが、今後もすでに発行される予定が複数あります。僕も企画していますし@golden_luckyも何かを画策されているようです。

いつ登場するかは分かりませんが、楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです。

2017/12/06

編集者も本を売りに行こう

お前誰よ?

このエントリは「編集とライティングにまつわるアレコレ Advent Calendar 2017」6日目の記事です。

こんにちは瀧澤です。モーリさんにお声をかけていただいて参加しました。

初めての方向けに説明しますと、とある人文系特殊版元から某IT系版元で12年弱編集に携わり、現在はこれまた別のIT系の版元で電子書籍関連の仕事などをしています。モーリさんは二つ目の会社の先輩でした。

最近の主な興味は分割型キーボードの自作です。自分でもErgodox_ezという分割型のキーボードを使っていて大変気に入っています。分割型キーボードの効能についてはこの辺に書いてあるのですが、僕も今のキーボードを使うようになってから肩こりが劇的に改善しました。

いまはこの分割型キーボードを自作するネットワーク上のコミュニティができていて、そこを覗きつつirisのPCBを注文して届くのを待っています。その間にLet's Splitにも興味が出てきて、着実に沼にはまりつつあるのを感じている日々です。

「フルスタック編集者の話」ではなく

さて、当初はフルスタック編集者について書こうと思っていたのですが、このアドベントカレンダーに登録されている方には真のフルスタック編集者(自分で出版社をやってらっしゃる)がいらっしゃるので、その辺の話は他の方にお任せして、僕は他の方の書かないようなことを書いてみようと思います。

僕は現在は編集者ではなく、主に電子書籍サイトの運営と(ファイルフォーマットの管理という意味での)コンテンツ制作、たまに実際に電子書籍を企画編集するコンテンツ制作を行なっています。2008年からやっているのでもう9年になるのですが、当初はできることがとても限られていたので、それ以外のこともいろいろやっています。その中にはユーザーコミュニティや各企業が主催するイベントに出向いて書籍の販売を行うなんていう業務も含まれています。

「あー、学会なんかで売るアレね」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、現在の勤務先はその辺ちょっと変わっていて、というか僕を今の会社に誘ってくれた元上司が常に手を抜かない人だったため、どんなイベントでも周りが引く位の書籍を持ち込んで販売を行っています。

一年のうちで一番大きな出展イベントになると、販売用に持ち込む書籍が2,000冊を超えたりします。コンピュータ関連書なので判型もそれなりに大きく(ほとんどがB5変形とA5で、半々くらい)、その他の機材やノベルティとして提供するグッズなども合わせると、2トンのトラックではちょっと積みきれないくらいの物量になります。

積載量4トンのトラックに積み込みを完了すると、だいたいこんな感じになります。

ちょうど今年のイベントの設営中の写真がありましたので貼っておくとこんな感じです。

昨年のものですが、ブースが完成するとこんな感じになります。

このクラスのイベントになると、やってくるお客さんの数も半端ではありません。別のイベントの話ですが、イベント後に決済アプリ(squareを使っています)のログを確認したら、一番混雑している時間帯で、1時間あたり60取引が記録されていました。レジ2台で回しているので、1つのレジあたり2分で1取引ということになります。

  1. お客さんが商品をレジに持ってくる

  2. バーコードをスキャンして代金を告げる

  3. 現金をいただいてお釣りを返す、またはカード決済をする

  4. 購入金額に応じてノベルティを提供するので、複数から選んでもらう

  5. 商品とグッズを袋詰めしてお渡し

を2分に1回です。一日中この状態が続くわけではありませんが、結構大変です。

イベント販売の現場から

ここまでお読みになって「どこが編集と関係してるんだ」とお思いになられるかもしれません。でもちゃんと関係しています。

上記でご説明したものは極端としても、ある程度の物量をさばいていると、普段見えないことが見えてきます。というのも、そこに来たお客さんがとる行動は、多くの場合、日々普通の書店さんで起きているであろう状況にずいぶんと近づいていると思われるからです。

書籍を売るためには陳列するのですが、どういう順番で何を並べると良いのかから既に戦いは始まっています。書籍同士の関係性になるべく破綻がないように並べるところから始まるのですが、複数日のイベントでは初日ほとんど売れなかったのに、置き場所を変えると途端に動き出したりします。

イベントによってはよりお客さんの注目を引くために、その場で手書きのPOPを書いたりもします。声がけなんかもします。何を書けば、どんな言葉をかければお客さんの目に止まるのか、振り向いてもらえるのか。目の前でリアルにお客さんの反応が見られるので、途中でPOPを作り直したり、本の置き場を変えたりして、お客さんの反応どう変わるかを確かめる。そこから学べることがたくさんあります。

また、中には書籍の内容についてご質問を受けたり、内容に関する感想をいただいたりします。個人的な話ですが、プログラマの友人が結構いるので、イベントによっては書籍を買いにきた彼らと雑談をしながら、なぜその本を選んだのかを聞いたりすると、思っても見なかった書籍同士の関連性がわかったりもします。

いわゆるPDCAサイクルというやつが、イベント中にぐるぐる回ってるのがわかります。電子書籍販売サイトを運営する上で、このイベント販売の経験から学べることがたくさんありました。また、オビやサイトの惹句を考えたりするときにも、イベントで見かけた光景を想像しながら言葉を選んだりします。

電子書籍の販売を始めた当初には、「イベント会場で電子書籍を手売りする」ということもやってみました。完全に冗談からはじまった話なのですが、実際に電子書籍を買いたいという方の生の声を聞けた(そしていろいろなご不満をいただいたりもした)ので、(良い意味で)その後の方針やら決定やらに大きく影響したと思っています。

誰でも、そしてどんな版元でもこういう環境が得られるかは別としても、お客さんが平台に積んだ本を手にとって、中をパラパラと眺めて購入する、または元に戻す。という行動を観察して、それを自分の本作りに活かすということなら、割と簡単に始められると思います。そして自分が関わった本が目の前で売れていく様を見るのは大変気持ちの良い光景です。

まとめ

  • お客さんに直接書籍を販売に行くといろいろ学べます

  • いろいろ試行錯誤をして、ハマった瞬間は楽しい

  • あまりに規模が大きくなると、それはそれでしんどい

  • 分割型キーボードで肩こりが激減するよ

明日はmktredwellさんのエントリです。お楽しみに!

2017/06/14

『Real World HTTP』という書籍を(9年ぶりに)編集しました

発売されています。EbookはPDF、EPUB完備です。

Real World HTTP - 歴史とコードに学ぶインターネットとウェブ技術

https://www.oreilly.co.jp/books/images/picture978-4-87311-804-8.gif

どんな本なのか?

内容は、書誌情報のページに書いてある通りですが、いまのHTTPの仕様とその周辺にある技術を、その成立過程を紐解きつつ紹介するという書籍です。

HTTPってメソッド送ってレスポンスが返ってきて、ヘッダーとボディがあって、ステータスコードが...というのは何となく知っているという人もそれなりにいらっしゃると思います(僕もその位の知識でした)。

ですが、ふと「ダウンロードの中断と再開ってどうなってるんだっけ」とか「SSLが安全ってどういうこと」とか「ブラウザでビデオ見られるやつってどうなってんの」とか考え出すと色々わからない。

そういった疑問について、おおよその概要を紹介しつつ、元の仕様や情報へのポインタがまとめられております。こんな本が読みたかった。

制作過程について

内容については渋川さんご自身が書かれたblogをご覧いただくのが良いと思います。ここでは本書の制作についてまとめます。

ご執筆はSphinxで行われました。執筆〜推敲の過程はそのままSphinx上で行い、ある程度まとまったところで、しろうさん謹製のsphinxcontrib-revierbuilderでRe:VIEW形式に変換しています。

前回、渋川さんにご執筆いただいた時はXMLBuilderでXMLを出力し、クイックハックしたXSLTでRe:VIEW形式に変換しました。以前の方法に比べると、出力した後に手を入れなければいけない箇所(主に空白の扱い)が激減しました。しろうさん素敵です。

そのあとは、Re:VIEWを元に各フォーマットを作成するというプロセスで、これはオライリー・ジャパンのサイトに寄稿していただいた武藤さんの記事が参考になります。本当は制作の工程をトップスタジオさんで行う事も考えていたのですが、オライリー側の事情で実現しなかったのは残念だったことのひとつです。

上記のような経緯で、そこから先の制作について特別なものは特にありません。一番残念だったのは、自分が10年近く書籍の制作から遠ざかっていたために、細かい部分を完全に忘れていて、もう少し機械化できる部分があったことに後から気がついてとても反省しています。最終的に力技でつじつまを合わせてしまった箇所が沢山ありました。そしてちゃんとつじつまが合っているのか今でも不安です。力技ダメ、ゼッタイ。

多様性を確保するための電子書籍

さて今回、紙の書籍で150ページ前後の電子書籍として企画されたものを、後から書籍に変更するという過程を踏みました。プロトコルのアップグレードみたいな感じです。 もちろん、電子書籍のみで出版するのと書籍にするのではかかるお金や影響が大きく異なりますので、改めて企画書を提出して社内の審査を受けています。

多くの技術書は、

執筆→書籍

執筆→雑誌連載→書籍

という過程を経て誕生します。最近では、

執筆→Webの連載→書籍

という過程もありますね。書籍1冊を書き下ろしで書くのは、書き手も出版社の側もリスクと投入コストが大きく。新しいチャレンジを行うのはとても難しい。その点、雑誌記事という場は、新しい題材へチャレンジしたり、執筆や翻訳の経験を積むためにはとても良いステージだと思います。

現在、コンピュータ関連の技術雑誌を定期発行している出版社というと技術評論社さんと日経BPさんの2社が思い浮かびますが、(僕の目から見ると)雑誌を持っている出版社さんからは、新しい書き手がどんどん登場してくる印象があります。

一方で−−僕も雑誌編集部にいたことがあるので分かるのですが−−雑誌を維持するというのはとても大変なことです。単純に企画を立て、取材をし、原稿を寄稿してもらい、誌面を制作して雑誌にまとめるというだけでも多くの労力が必要ですが、それを事業として継続するのはさらに難しい。

また、雑誌やWebの記事を書籍にまとめるという方法については、1回ごとの分量に限りがあるため、ある程度の期間連載を続けてから、内容を再構成するという過程を経ます。連載の最初の頃と最後の方では半年から年単位で期間が開いていて、対象としていたテーマそのものが変化してしまうなんてことが起きたりもします。

僕がここ数年やってきたのは、これとは別の過程で、

執筆→電子書籍→ブックレット(プリント・オン・デマンド)

という流れでした。雑誌記事よりは長く、書籍よりは短い。ある程度まとまった分量の知識を、素早く世に送り出せますし、雑誌を維持する労力よりはローコストに(≒小規模に)新しいことにチャレンジできます。今回、ここからさらに派生して、

執筆→電子書籍→書籍

という流れを作れたのは、僕としては収穫だったと思います。

最近では技術書典に出展された同人誌が商業出版に乗るというコースも登場していて、情報がまとめられて広められる方法の多様性が増しているのは良い事だと思います。

いろいろな出版の仕方ができることによって、新しいチャレンジ、これまでは世に出ることがなかった著者さんの原稿が多くの方に届けられるのではないかと思っています。電子書籍についてはいろいろなご意見がありますが、実務に携わる僕の立場からは、道具としてうまく使おうと思うだけです。

ということで、オライリー・ジャパンで電子書籍の執筆をしてみたいという方はお声がけください。締切等監視委員会はいつも皆さんを見守っております。

おとうさんはえらい

さて皆さん、ご存知の方も多いと思いますが、渋川さんは3人のお子さんを持つお父さんで、日々のお仕事に加えて子育てにも追われる日々を送っていらっしゃいます。にもかかわらず300ページを超える、しかも内容の濃い書籍をお書きになるという生産性には驚嘆させられております。しかも本書と並行してAscii.jpさんで連載しているんですよ。

お子さんたちにも何度かお会いしたことがあるのですが、これがもうとても可愛いらしいお子さんたちで、そんなご家族との時間を削って執筆していただいたことには、感謝の気持ちしかありません。

昨年の10月に、近隣に住むPythonユーザーで公園に集まってバーベキューをする機会があって、その時には「年末くらいにはまとめたいですね」というお話をしていた気がするのですが、HTTPという(いまでは)大きな仕様を相手にするにはもう少し時間が必要だったようです。

作った僕が言うのも何ですが、現在のHTTPの仕様(とその周辺)をまるっと理解して、より詳しい情報なり仕様なりにアクセスするための道しるべとしてよい本になったと思います。僕自身も勉強になりました。HTTPを使ってユーザー以上の何かをするという人は目を通しておいて損はないと思っています。