さて、PySpa会場として不動の地位を得ている芳泉閣は、熱海のおとなり来宮という場所にあります。駅から宿に向かう途中に来宮神社という古社があって、これが地名の由来のようです。
来宮神社のWebページを見ると三柱の神様の名前が書かれていますが、最初の二柱は記述があっさりしています。神社の縁起に関連する逸話の残っていることも合わせて考えると、最後に書かれている大巳貴命、すなわち大黒様がこの神社のもともとの神様ではないかと思います。
大黒様というのはご存知の通り、大きな袋を抱えた福々しいお姿をしておりまして、言い伝えによると海の向こうからやってきて、福をもたらす神様とされているのだそうです。来宮という神社の名前はこの辺に由来しているのではないかと思います。
それまで各地の温泉地を流浪していたPython温泉が、そのような名前の土地に辿りついてしまったわけです。
閑話休題。
僕がPySpaに参加するようになったのは、今の会社に入ってから3か月くらい後のこと。 何かの機会にお会いした増田さん(@whosaysni)から「Python温泉という、みんなで熱海の温泉に集まるイベントがあるので、ぜひいらしてください」と誘っていただいたところからはじまります。
ちょうど仕事で使うツールを自分で書いたりしていたところだったので、業務の合間にちょこっとではなく、まとめてプログラミングをする環境に自分を置いてみたいと思ったことから参加を決めました。初参加は2008年の10月開催の第4回になります。
増田さん、Vの人ほか数名とは面識があったのですが、正直「プログラマじゃない俺が参加しても大丈夫かな」と不安に思っていました。結果から言うとそれは杞憂で、3日間、楽しく過ごすことになりました。すっかり味を占めて、申し込み開始5分で埋まってしまったり、自分の都合がつかなかった時以外は毎回参加させてもらっています。6回くらいは参加しているはず。
参加したことのない人には中身が分かりにくいイベントだと思いますが、例えばこんなことがありました。雰囲気の一端はつかめるのではないかと思います。
SimpleHTTPServer撃墜〜検死カーネルHacks
これを見る通り、技術力の高い人たちが集まっているので、いったん技術の話を始めると、コンテンツレイヤーからインフラまで、いろんな引きだしがあって、とてもいい刺激になります。
10年くらい前、まだPyJUG網本衆のお手伝いをしていた頃、半年に一度くらい、石本さん、岩田さん、蘭水さんなど、網本第一世代の人たちと飲みに行っては技術ネタの馬鹿話をするという事をしていました。顔ぶれを見ればお分かりになると思いますが、僕以外は皆、毛深いPythonハッカーで、詳しくは書きませんが「ハッシュの正しい使い方」とか、いろいろ楽しい話をお聞きしました。
気の置けない小さな集まりでしたが、やがて皆忙しくなってしまったり、連絡が取れなくなっていたり、しばらく集まる機会が無かったのですが、PySpaに参加していると、そのころと同じような刺激がよみがえってきます。この楽しさは何なのだろうなと思うのですが、ふと思ったことがあります。
カート・ヴォネガットの書いた『スラップスティック』という小説には、アメリカ合衆国大統領になった主人公が推し進める「拡大家族計画」というプロジェクトが登場するのですが、PySpaというのは、もしかしてこの拡大家族の一種なんじゃないかと思うのです。
念のため解説すると、アメリカ国民の不幸の原因は孤独にあるとして、全アメリカ国民に新しいミドルネームを付与することで孤独を解消しようという計画です。コンピュータを用いて「ダフォディル-11」とか「チップマンク-7」とかミドルネームをつけて、ある日突然数万人の(暫定)親戚ができるわけです。
これと似たような感じで、それぞれ年齢も違うし、仕事も興味の対象も異なるけれど、親戚が年に数回、正月や法事に集うように芳泉閣に集まって、マサカリを投げたりする集団。それがPySpaなのかなと思います。みんなで集まってごはん食べるし。
遠い昔、来宮の地にたどり着いて神社を建てた人々も、もしかしたらこういう集団だったのかなと夢想してみます。とても愉快な気分になります。きっと来宮の長はグレーのパーカーを着ていたに違いありません。
まあそんなわけで、若い人たちがゲラゲラ笑いながら殴り合ってるさまを眺めているのは、リアルなオッサン的には「うむうむ」と目を細めるあらまほしき光景です。どんどんやっちゃってください。
僕の与太話はこのくらいで止めておきましょう。それではまた。
明日、6日めを担当するのは @kuenishi です。よろしくお願いします。
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