2014/11/03

『理不尽な進化』読書メモ

国書刊行会の同期で、友人の吉川浩満君が執筆した書籍『理不尽な進化』が刊行された。めでたい。

本書の執筆中に開催された合評会に呼んで貰った縁で、一部献本していただいた。有り難いことであり、またたいへん恐縮している。というのも(僕の記憶によると)合評会で僕がしていたのは、本番後の居酒屋における吉川君とのたわいもない馬鹿話だけで、本書の成立にまともな寄与をしたとは思えないからだ。

自分なりの感想をまとめることで、多少なりとも友人の書籍(の売上)に貢献できればと思っているのだけれど、より良質な解説は山本さんによって既に行われている(はず。何も書けなくなる不安から、まだ拝見していない)。ぜひこちらを先にご参照いただけたらと思う(下記リンク先)。

http://d.hatena.ne.jp/yakumoizuru/20141031

本書は「進化論」に関する書籍であり、また僕を含めた世間の人間が「進化論」という科学理論をどのようなものとして受け止めているのかについて考える書籍でもある。正直に申し上げて、本書で取り上げられているような事をこれまで考えもしなかった。だが本書に登場する進化論的ポエムとそれを言い放つ「ドヤ顔」については具体的な映像についての心当たりもある。そんな訳で、本書をとても興味深く読む事ができた。上記のような「ドヤ顔」への違和感を共有できる方であれば、本書を楽しくかつ、その違和感の正体をより深く知る一助としても読めるだろう。

というのは本書のほんの入り口で、考察はさらに専門家同士の論争を経て、進化論という学問のあり方というような所にまで及ぶのだが、僕の可哀想な理解力では(そしてまだ駆け足で一度読んだきりという状態では)、これ以上何かを書くととんでもない間違いを犯しそうなので、ぜひ実際に本書を手に取ってご自分の目で確かめていただきたい。僕自身としては良い刺激を受ける書籍であったと思っている。

ところで「進化論」というテーマには全く関係ないのだが、本書の中では他ならぬ吉川君の文章が、これまで読んだ著作に比べてより彼らしいものであったという感想を持った。ある部分とても真摯であり、そしてときおりの軽快なジョークを挟んだ文体は、まるで居酒屋のテーブルで聞いた彼の語り口そのものだ。

そんな訳で本書を読み進めながら、僕は頭の中のどこかで常に彼の表情を意識し続けていたのだが、どう考えても、その表情がドヤ顔をしていると考えざるを得ない箇所があるように思えた。次回、お会いした時にでもその真偽について確認してみたいと思う所存である。

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