このエントリはIngress Advent Calendar 18日目の記事です。
はじめに
皆さんこんばんは。ingress楽しんでますか?もともと、友人がプレイしているという話を聞いていて「へー、ARのゲームなんだ」くらいに思っていたのですが、今年の初めに試しにインストールしてみてビックリしました。この年まであまりゲームにはハマらず生きてきたのですが、リアルな世界の歴史、地形と濃密に絡んだ戦い。思わずのめり込んで間もなく1年が経とうとしています。
さて、実はingressをはじめてから、本棚の『孫子』を改めてひっぱり出してきて3回読み返しました。それまでとは違って、エージェントとしての目で『孫子』を読むと、その文章は全く異なる姿で僕の目に映るようになりました。
『孫子』
ご存知の通り、中国古典である兵法(戦争を中心とした治世)のもっとも基本的な書物です。現在では「当たり前の事が書かれていて、いまやそれほどの価値は無い」と言われる事もあります。でも、この時代の古典というのは特殊な書物で、知識のエッセンスがこれ以上ないくらいに凝縮されています。凝縮されているがゆえに、読み手の解釈の幅が生まれてくる。ここがおもしろい。
昔から、多くの解釈や読み解き方があって、僕も岩波文庫版、中公文庫版など何冊か持っています。Webでは、以下のリンク先に原文と書き下し文が詳解されているので、一度ご覧になると楽しいと思います。本文中の引用は、このサイトからのものです。
http://kanbun.info/shibu02/sonshi00.html
ingressエージェントのための始計篇
ここでは『孫子』の冒頭、「始計篇」から幾つかご紹介したいと思います。まずは最初のこの一節。
孫子曰く、兵とは国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。ゆえにこれを経るに五事をもってし、これを
校 るに計をもってして、その情を索 む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり。
「兵とは国の大事なり」重い言葉ですね。ingress的に読み換えてみると「ingressとはエージェントの大事なり」とでもなるでしょうか。すごくザックリいえば「リアル大事」って事です。家族に隠れてリアル課金とかするのはマズいです。ええ。
「
「五事」というのは、こういう事。
- 道:国の治世(君臣の心が一致していること)
- 天:気候や天候、時機など
- 地:地勢や地形
- 将:指揮官の力量
- 法:軍隊をまとめる規則や規律
これもingress的に読み替えてみるとこうなる。
- 道:エージェントのプライベートの充実
- 天:気候や天候、時機など
- 地:地勢や地形
- 将:エージェントの力量
- 法:エージェントプロトコルや倫理観
そのままですね。読み進んで行くと、必ずしも当てはまらないような箇所もあるのですが、そういうのは気にしない事にします。そもそも千年以上前の戦争の話と、ingressでは環境が異なるので、100%同じ読み解き方をしても仕方がありません。
続いては、これも凄く有名な一説ですが、「兵」を「ingress」に置き換えて読み返してみると含蓄がありますね。
兵とは
詭道 なり。ゆえに能なるもこれに不能を示し、用なるもこれに不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、実にしてこれに備え、強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓 し、卑にしてこれを驕 らせ、佚 にしてこれを労し、親にしてこれを離す。その無備を攻め、その不意に出ず。これ兵家の勢、先には伝うべからざるなり。
「正面から挑んでも勝てそうにない相手にどうやって挑むか?」「エージェントに取って用/不用とは何か?」なんて事を考えながら読むと想像力を刺激されて仕方ありません。
まとめ
ということで、ingressをプレイする際に『孫子』を読んでおくと、色々面白いのでお勧めです。普通、軍人さんでなければ戦術論を実際に試してみる機会なんてありませんが、ingressでなら実際の地形や人を相手に試してみる事ができます。ピタリとはまった瞬間はとても楽しい。
ここで紹介したのは全部で十三篇ある『孫子』の最初の一篇、さらにほんのニ句だけ。もちろん全てが役立つ訳ではないので、そこはご注意ください。この時代の中国では良くある話ですが、例えばここで紹介した始計篇でも、「私の言う事を聞けば勝利間違いなし」と自分を売り込むような内容の句があったりします。その一方で、第六の『虚実篇』なんかは実際的な意味でとても勉強になると思います。
Ingress Advent Calendar 2014、明日はpekoyaさんです。
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